Interview

前編後編特別編全曲紹介

前編後編とお送りしてきた『サムハウ,サムホエア』スペシャル・インタビュー。いよいよフィナーレの番外編をお送りしよう。今回は、福田穂那美(以下、穂那美)と石田成美(以下、成美)のリズム隊2人が登場。普段はインタビューなどで言葉を発する機会の少ない彼女たちゆえに、貴重なトークを収めることができた。畳野・福富という天才シンガーソングライター・コンビの背後に隠れがちではあるが、彼女たち2人も絶妙なタッグであえることが伝わる丁々発止のやりとりをお楽しみいただきたい。その週末に控えたゆるめるモ!との対バン告知を、ある著名人にリツイートされたという、レーベル社長・小山内信介による報告から、会話はスタートした。
interview by 田中亮太
穂那美
しんす(小山内)、吉田豪好きやな~。
小山内
フォロワー7万やで!

でも、どうですか?書き手が有名無名かは関係なくネットや雑誌やらで、自分たちについて言及されることも増えたかと思うんですけど、印象的に残っているものはありますか?

穂那美
どうやろ。エゴサーチはみんなめっちゃするけど、
成美
ライヴ終わったあとの車で。
穂那美
でも、細かい内容は覚えてない。
成美
最悪やーって思ったライヴでも「良かった」って書かれてたりすると、
穂那美
逆にちゃんと見てくれてたんかなーって思ってしまう
成美
NHKのライヴビートに出た時、自分的にも全然良くなかったって思ったんですけど、ツイートでも「ドラムめっちゃバタバタやな」ってのがあって。それがめちゃショックで。
穂那美
スクショしてたもんな、戒めとして(笑)。

畳野さんが言ってたんですけど、成美さんはめちゃ練習熱心で、穂那美さんは感覚肌だと。この2人も根本的な性格は対照的なのかなと思ってるんですが、どうですか?

成美
全然違う。あの2人との距離感は一緒くらいやけど。

お互いをどういう性格だと思っていますか?

穂那美
なるちゃんはアクティヴ。好きなことに関して、例えばご飯とか、店めっちゃ探してめっちゃ行くし。私は正反対。
成美
好きやもんな、家。
穂那美
うん、家めっちゃ好き。
成美
一緒にご飯行こって言ってんのに、家から出てこない。
穂那美
もうちょっと寝たいとか言って(笑)。いや、行きたいんやけど、前の日夜遅かったら、もうちょっと寝てたい。家好きやし。

もし、畳野さんないし福富くんが東京で活動したいって言ってきたらどうしますか?

穂那美
えー、でも絶対言わないですからね。

それはどうして?

成美
しんすが京都にいるから。だって4人じゃ絶対無理やもん。

今回のインタビューで他の2人は2013年はバンドとしてはあまり良くなくてって言ってたんですが、それは2人も当時共有してました?

穂那美
読んで、ああそうやったんやって思った。
成美
私も。
穂那美
なんにも思ってなかったな。良いも悪いも全部延長線上って感じでやってる。
成美
別に楽しかったよね。
2人
(笑)。
成美
ただ、2014年はより2:2に別れた感じはあって。
穂那美
レコーディングとかな。演奏面ではうちらもお互い意見を言うようにはなって。「ここはああしてほしい」とか。

2014年に入って、畳野さん、福富くんのタッグ感も強まったみたいですしね。

穂那美
そうですね。今までのやつは2人やけど、どちらか1人がって感じで、2人で作ってきてってわけではなかった。今回のやつはがっちり2人で。元になる曲みたいなのを決めてそこから作るみたいな。だから、2人がどうしたいってのはめっちゃあるんやろうなってのは伝わってきて、
成美
でも、あっちの2人のなかでは固まってたけど、
穂那美
それがこっちまで伝わってきてないから不安やった。2人で共有できてるものが、うちらには共有できてないから悲しいなって。
成美
うん。

メインのメロディがないなかで、リズムだけ録ったと聞いています。確かにそれはわからないと思う。

穂那美
もうずっと不安。完成図がまったくないまま録るって感じで
成美
録ってからも合ってるか不安やった。
穂那美
歌の邪魔してへんかなあとか

特に"レモン・サウンズ"がわからなかったみたいですね。

穂那美
2人が持ってきた時は、個人的に全然良いと思わなくて。今まで1曲もそういうのなかったのに。でも、それを言っていいのかもわからず。結局お酒の力も借りて言っちゃったんですけど。

それってメトロで王舟とやった時の打ち上げ後?深夜に龍門前で口論してましたよね。

穂那美
そう(笑)。
成美
曲調が今までと違うのに、メロディがないから、どうなるかわからんかった。
穂那美
ベースもどう弾いていいかわからんくて。

じゃあ、実際レコーディングにあたって、ぎくしゃくしたりは、

穂那美
レコーディング前の空気すごかったですよ。
成美
ずっとやめたいって思ってた。
穂那美
とりあえず早く終わってくれ!って思いながら。全然楽しくなかった。時間もなく、とりあえず焦って作らなアカンって。
成美
「ここは良くない」っていうのも言えないし。
穂那美
そう言っちゃうと進まんくなっちゃうから。代わりになる提案もできひんしな。

これまでとは異なる曲調への挑戦に戸惑った面が多かったかと思うんですが、“レモン・サウンズ”以外で2人のアイデアを理解するのに時間がかかった曲は?

成美
グレート・エスケープかな。元ネタ(1975“チョコレート”)まんますぎるきがして。
穂那美
ヴォーカルが乗ったら印象変わったけど、それまではもう「まったく一緒やん!」って思ってた。さらにレコーディング直前で福富が「やっぱこれまんますぎません?」って言い出して(笑)。
成美
あんたがそういうの!?って(笑)
穂那美
レコーディングに関しては、たぶんなるちゃんのほうが不安はあったんちゃう。
成美
新しいことができるようになるってのは嬉しかったんですけど、“グレート・エスケープ”は技術的においつかなくて。結局アルバムでは貼ってもらってるんですよ。それがすごい悔しくて。

なるほど。五里霧中の制作だったようですが、2人のなかで今回のアルバムを「良い作品になってる!」って思えたのはどのタイミングですか?

穂那美
それはもう、ほんとに最後。ヴォーカル入って全部できあがったのを聴いたとき。「わあ!良かった~」って。「ちゃんとできてる!」っていう。うちらはほんまにここ2人の音しか聴いてなかったので。
成美
向こう2人のレコーディングには私らはいなかったから。ほんと初めて歌やメロディを聴いて。
穂那美
全部入ったやつを聴いたときは、ほんと感動しましたね。

アルバム・リリース以降のライヴで見る限り、グレート・エスケープはすごい変わった気がします。“1975”感がなくなって、しっかりとホームカミングスの良い曲って印象。

成美
最近やっと自分のものになった。
穂那美
“グレート・エスケープ”は、お客さんがノッてるのがわかりやすいから、やってて楽しい。

あと“ゴースト・ワールド"とか“ペーパータウン"みたいなビートがバシバシきまる曲はほんとに今ライヴで良いと思いました。ただ“サムホエア”みたいな曲はまだ定まってないのかなって。

成美
個人的にですけど“サムホエア”はまだ悩んでるところがあって。めっちゃ軽くもできるけど、私的にはペイヴメントの跳ねる感じってのが頭にあって。それで最近聴くようにしてるんですけど、ペイヴメントのドラムって跳ねてるけど、後ノリっていうか。跳ねてるけど、すごい遅い、ズレてそうだけど、ギリズレてない。それが“サムホエア”では出せたらいいなと思って。まだそれを掴みきれてない。“アイ・ウォント・ユー・バック”みたいな感じにしたら、それはそれではまるとも思うんですけど、これは違うんだろうなって。

でも、プレイヤーとしては2人とも、アルバム以降さらに頼もしくなったことは間違いないかと思うんです。自分たちでも実感はあります?

穂那美
自分自身に対しては自信は全くないです。他のメンバーに対しても見る目が厳しくなってるし。
成美
周りからは褒めてくれることも多くなってきたけど、一緒にやるバンドもどんどんレベルが上ってるから、それを見てるとまだまだっていうのがある。
穂那美
やばいなって焦りは、
成美
それは常にあるよね。
穂那美
でも、今回のアルバム・ツアーでは、ヨギー(・ニュー・ウェーヴス)とcar10を見て、ぽんちゃん(畳野)も「負けたくないと思った」って。
成美
歌の感じはツアーで変わった気がする。
穂那美
熱い感じになったよね。名古屋が私たち良くなくて、そのあとヤバイなあってなって。ちょっとだけ喋ったよね。
成美
4人で。機材車を待ってる時に「自分らのツアーなのに完全に負けてたな」って。

こういう風になりたいって目標にしているような存在はありますか?

穂那美
うーん、どうやろ。
成美
こうはなりたくないってほうがある。
穂那美
うん、下手くそは嫌やな。
成美
曲良いのに下手なのは。
穂那美
でも上手いのに曲良くないのもなあ。もったいなってなる。
成美
媚びすぎるのも嫌。
穂那美
MCとかで?
成美
一定の距離は持っときたい。
穂那美
演奏面以外で、無理するのは嫌。やりたくないと思ってるのにやるんは。ちょっと見栄え気にしてめちゃ動いたりとか(笑)。メジャー行ったら、みんなあんなんなるんかな。
成美
(笑)それ、こないだみんなで言ってた。言われて、ハットかぶったりとかね。それは嫌。
穂那美
演奏しながら飛んだりできひんもんな。